2010/03/19
春(時かけ.jp)
 3月も半ばとなり、コートの要らない穏やかな日が続く。気が付くと季節はようやく一巡りし、我が家の北向きのルーフバルコニーにも暖かい春の陽射しが戻ってきた。空は青く、風は柔らかく、空気が春めく。梅が散って桜の開花までには少し間があるものの、足元に目を落とすと、クロッカスが緑と白のツートーンの葉を触手のように青空に伸ばし、その中に薄紫の小さな丸い花が開きかけている。青く甘いにおいが微かに漂い、傍らのチューリップの芽もずいぶん大きくなって、葉の縁が赤く色付いている。そう、季節は来るべき春本番に向けて確実に歩み始めていた。

 椅子に腰かけ、金曜日の夕刊に目をやると、紙面には折りしも春の映画の広告が目白押し。と、広告の中で紹介されている映画の公式サイトの記載の殆どが、「http://」の付いたURLではなくドメイン名のみの記載であることに気付く。数年前までは、ドメイン名のみではアドレスと認識されなかったせいかURLの記載ばかりだったけど、ここ数年でドメイン名の露出も増え、ようやく市民権を得たということか。そしてその半分以上が短くわかりやすい汎用JPドメイン名を利用している。中でも現在上映中の「時をかける少女」のドメイン名は「時かけ.jp」とわかりやすく覚えやすい日本語JPドメイン名だ。筒井康隆原作のこの小説はこれまでにも何度か映画化されているが、その公式サイトのURLを見ると、最初の映画化のとき(1983年)は当然Webサイトはなく、アニメーション版(2006年)が、http://www.kadokawa.co.jp/tokikake。そして今回がhttp://時かけ.jp/と、その変遷がインターネットの歴史そのものというか、なかなか感慨深い。

 そう、毎年同じように季節は巡り、それでも少しずつ確実に世界は変わっていく。‐あるものは進歩し、そしてあるものは失われていく‐眼下の丘陵では、最後に残っていた崖の上の緑がパワーショベルで崩され、槌音が響いている。やがてコンクリートで綺麗に整地され、白い家やマンションが建つのだろう。そう、もう今年の秋から、あの崖に咲き乱れるピンクのコスモスの花を見ることもないのだ。「年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず」せめて、花くらいはいつまでも同じように咲いていて欲しいと思うけど、そんな望みももうかなわない。それでも春は来る。崖の上にも暖かな陽射しを惜しみなく降り注ぎながら。

(J)
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