2007/09/14
ある秋の日に(komedia.jp)
 暑く燃える8月がようやく過ぎ、9月は台風とともにやってきた。長雨が続き、今となってはあの暑い日々が白昼夢だった気さえする。我が家のルーフバルコニーのささやかな庭でも、大輪の黄色いダリアがすっかり風に薙ぎ倒されてしまった。それでもいつのまにか伸びた朝顔の弦がよわよわとフェンスに撒きつき、曇った空をバックに紫色の花が浮かんでいるのを見ると、やわらかな外見とは裏腹な草花の強さに心が魅かれる。

 久しぶりに一時帰国した古い友人に会いに元町に出かけた。ゆったりとした時が流れる瀟洒な元町商店街にはパステルカラーのフラッグが道の両側にひらひらはためき、そこには「www.motomachi.or.jp」とURLが大きく書かれている。ゆっくり話した後、帰りにキウィのフルーツソースを買う。ラベルの文字は何語で書いてあるかはわからないけど、URLに「.dk」とあるので、デンマークのものだろう。テレビでは「○○で検索」が大流行りだけど、ドメイン名、中でもccTLDを商品に記載すると、「住所」が書かれているような安心感をユーザーに与えることが出来る。

 家に帰り、バルコニーに椅子を出して買ってきたCDを聴く。「米米CLUB」の10年ぶりの新しいアルバムはその名も「komedia.jp」。CDジャケットも新聞広告も、白地に黒で「www.komedia.jp」と記載されているだけなのに、シンプルでかえって目立つ。特設サイト(URLはもちろん、http://www.komedia.jp/)にアクセスすると、アルバム未収録の曲をダウンロードすることもできる。−これこそまさに「media」−。既存のメディアとインターネットとのコラボレーションについては試行錯誤が続いているけど、このようなやりかたも一つの解なのではと思う。

 アルバムには、新しい曲に混じり、馴染みの曲もいくつか収録されている。時を越えた懐かしさに心が緩み、ふっと優しい気持ちになる。でも聞いていると、アレンジが違うことに気付く。−さっき会った懐かしい人の中身がかつてと違っているように−。そう、時はなんて優しくそして気紛れなのだろう。柔らかく包んだヴェールの下で、外見はそのまま、いつのまにか中身を変えてしまう。懐かしい人も、そしておそらくは自分自身も。でも、Good Old Daysの甘い記憶の澱に沈むのではなく、新しい自分に変化していかなければ。ピンク色に染まった夕焼けの中、シオカラトンボが目の前をつうと過ぎ、横浜の秋は少しずつ深くなっていく。

(J)
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